創業を検討するも、最初の一歩を踏み出せないでいる方は世の中に数多くいると思われます。私も実はその一人でしたので、その気持ちはよくわかります。経営者になるということは、長い人生でも数少ない大きな転換期の一つということになりますが、実際に創業した方になぜ独立を決意できたのかを尋ねてみると、多くの方から、「あとで後悔はしたくなかったから」という言葉が返ってきます。つまり、後になって、創業しなかったことに対する後悔はしたくないということです。これは全くその通りだらこそ多くの方が創業すべきかどうかを悩むことになるのです。
一方で、思いきって創業したのち、数年後に健闘むなしく事業が立ち行かなくなり、継続を断念することになったときもまた、「あとで後悔する」のです。しかし、同じ後悔でも失敗した人が味わう後悔は、創業したことに対する後悔ではなく、その多くはそれまでの事業の進め方に後悔をするのです。決断について迷いがあり相談する相手が欲しい方がいましたら是非弊社までご連絡ください。相談は無料で承ります。
冷静に考えれば見送るべきであったケースであっても、何かのきっかけで話しが前に進んでしまい、慎重な判断を怠って開業してしまう方がいます。こうしたケースで見受けるのが断ることが苦手な性格であったことや、早く創業したいという焦りがある場合です。
ここで実際にあった失敗事例を紹介しますと、Aさんは飲食業で起業を考えて準備を進めていましたが、一向に良い出店場所が見つからずヤキモキしていました。
そんな時相談していた不動産屋から良い場所が開いたとの連絡があり、立地は決して良いとはいえないが
その分家賃も安いので賃貸契約を締結し創業した。
Bさんはフランチャイズでの出店計画のセミナーを受け自分でも上手くいくのではないかと思う。
そこで配布された事業計画書を基に融資の申し込みをしたところ、数週間後に融資が受けられるとの連絡があったので創業することとした。Aさんの例では立地の悪条件がネックとなり、Bさんの例ではフランチャイズ契約におけるデメリットをよく知らずに多くの自己負担を強いられ、いずれの創業者も数か月で廃業にいたりました。
「根拠のない自信」という言葉は成功した人が使いますが、
悪魔のささやきになることも忘れないでください。
創業を決断してから開業までには決めなければならないことは数え切れないほどあります。
その中には自分だけで決められることもあれば、オフィスや店舗の賃貸借契約の条件交渉、仕入先との価格交渉、内装工事やホームページ作成などの請負契約など、相手との交渉により決めていくものも多く存在します。こうしたやり取りの中で私が感じるのは、交渉力のない経営者は大抵が損をするということです。
このことは創業時だけに限らず、数年、数十年経っても同じです。
経営は様々な決断の連続ですが、高い値段の見積もり、明らかに不利な条件での契約など、経営経験の少ないことをいいことに騙されてしまう方がいます。経営には厳しさや迫力、緻密さといったものも大切です。お人好しタイプの方やNOと言えないタイプの方は特に注意しましょう。
地域の同業者は今までその地域でその業界を支えてきた先輩なので、良くも悪くも学ぶべきことはたくさんあるのでライバルと決めつけるのではなく、
少々勇気も必要ですが、ぜひ開業前に一社でも多くの同業者に会いに行きましょう。
素っ気ない方もいれば面倒見のいい方もいます。運よく話しやすい方に出会えれば、色々と突っ込んだ質問をしてみましょう。
どんな業種であれ、同業者との連携により成り立つビジネスが必ずあるように思います。
ライトハウス税理士法人の代表を務める猪熊正美も皆さんと同じく、この事業に自分の人生を賭けたいという気持ち、自分の事業で多くの人を喜ばせたいという想い、そういう情熱が不安を吹き飛ばし、今から22年前に独立を決断しました。創業間もないときのエピソードを一つ紹介します。
仕入先である(株)TKCの担当者に「同業者は年間どのくらいの顧問先を増やしていますか」と尋ねたところ、この業界の驚くべき現実を知らされました。その答えは「猪熊さん、年間10件も増えれば良いほうですよ」と言うのです。私はこの業界の現実にどういう訳かひどく傷ついたのでした。そこで私は早速その日の夜、じっくりと考えて、最低でも1年間に20件を増やすために、目標は30件にしました。しかしこの目標を達成するには月に2件から3件のペースで新規契約を捕ることなり、つまり週に1件のペースで商談がないと今後行き詰ることになると思い、気合が入る反面怖くもなりました。この高い目標を掲げた私の開業した頃の口癖は「絶対に負けない」でした。
昼間に積極的な営業活動をするため夜はその反動が大きく、反省と後悔の連続で、落ち込む日も多々ありました。その度に「絶対に負けねーぞ」と叫んでいました。その当時の仕事の依頼はほとんどが電話であったため、暇があれば携帯に向かって「鳴れ、鳴ってくれ」とつぶやきながら握り締め、1日電話が鳴らないときはガッカリし、一方で携帯電話に登録のない番号から電話が入ると、「よし来た!」といった具合で一呼吸おいてから着信ボタンを押すのでした。
今振り返るととても懐かしい思い出です。